はじめに
現在、僕は女子中学生のソフトボール部の外部指導者として活動しています。
現在27歳ですが、自分が中学生だった頃と比べると、部活動の環境は大きく変わりました。
- 欠席も比較的自由
- 練習時間・練習日の減少
- 熱中症対策への配慮
このように、かつてよりも「厳しさ」が少なくなり、自由や安全性を重視する方向に変化しています。
生徒たちの自主性を尊重しているとも言えますが、同時に「甘い環境」になりつつあるとも捉えられます。
どちらが良い・悪いという話ではなく、「そもそも部活動とは何のために行うのか」を考え直すことが重要です。
ここでは、中学生の運動部を前提に、部活動の目的とその意義について考察します。
部活動を行う目的とは?
部活動の目的は、人によって異なります。
生徒一人ひとり、そして指導者によっても価値観は違うため、目的は異なるでしょう。
しかし、いざ「部活動の目的は?」と問われると、意外に多くの大人が答えに詰まります。
目標(県大会出場など)はあっても、目的が明確でないケースが多いのです。
目的がなければ、目標を立てる意味も薄れます。
たとえるなら、「ゴールを決めずにとりあえず旅に出る」ようなものです。
(もちろん、そういった旅も悪くはありませんが、部活動という限られた時間の中では目的を定めるべきです。)
では、筆者が考える部活動の目的とは何か。
部活動を通じて得られる経験を、人生に役立てること。
これが、筆者の考える部活動の本質です。
次に、部活動を通じて得られる具体的な経験・価値を挙げていきます。
部活動で得られるもの
部活で得られる経験は、長い人生においてとても有益なものです。
勉強だけでは決して得られない経験が多いです。
だからこそ、勉強だけではなく、部活も頑張ってほしいのです。
では、どのような経験を得られるか詳しく見ていきます。
社会性を育む
最も大きい点は「社会性」を育むことができます。
社会性とは、人との関わり方・付き合い方を学び、円滑な関係を築くことです。
相手の気持ちを理解する、共感する、協調するなども含まれます。
人と関わる力、これは生涯において、非常に重要なスキルです。
人間は社会性の生き物で、一人では生きていけません。
これを部活で学べることができるのです。
もちろん、部活以外の学校生活でも社会性を育んではくれますが、部活ほど深く育むことはできません。
部活は、似たような考えや価値観を持った者が集まり、少数精鋭で、過ごす時間も長いため、深い関係になりやすいです。
その中で、協調しながらやっていく、相手の気持ちを考えて動くなど、非常に大切なスキルを磨く経験が深くできます。
他人の気持ちを理解・共感
他人の気持ちを察する能力は非常に大切です。
部活ではどのようにして、この能力を身に着けるのか。
- 連携プレーなどで、どこに投げれば仲間は取りやすいか
- きつい練習で、どんな声掛けをすれば頑張れそうか
- 体調が悪そうではないか
- 理不尽な叱責であの選手はかわいそう
など、部活では様々な場面で仲間の気持ちを読み取ろうとする場面が多いと思います。
相手の気持ちを理解し、寄り添い、共感する。
このようなシーンが、部活動には多いです。
大人になってからも大切な能力です。
相手の気持ちを理解して、何をするか。これはビジネスで必要な力です。
ビジネスは、誰かの課題・問題を解決して、その報酬としてお金をもらいます。
また、会社員などで働く場合も同様で、なにを相手が求めているかを察して動く能力は大切です。
協調性
団体競技にしても、個人競技にしても、部活動では仲間との協力は欠かせません。
ランニングで声を合わせる、大きな声をだして仲間を鼓舞するなど、部活でも協調性を育むシーンは見られます。
大人になってからも、仕事でもそうですし、家庭での活動、地域のボランティア活動、趣味活動など誰かと協力してやることが多いです。
人は一人では生きられないので、協力しながら生きていきます。
若いうちから協調性を学べるのは非常に良いことだと思います。
人間力の向上
人間力とは明確な定義こそありませんが、「社会の一員として自立するための総合的な力」と定義します。この定義からもわかる通り、「社会」という場において、真価を発揮する力です。
- 他人を思いやる心
- 困難な状況で我慢する姿勢(諦めない姿勢)
- 失敗しても立ち上がる力(挑戦する力)
- 失敗を認められる(誤魔化さない)
など、一例ではありますが、これらは社会に出た際、専門的な技術や知識以上に、この「人間力」が状況を左右し、よりどころとなる場面が数多くあります。
部活動は、まさにこうした人間力の土台、つまり社会で生きるための総合的な力を育む、極めて貴重な学びの場だと言えるでしょう。
自尊心の肥大化を防ぐ
自尊心とは、「自分を大切に思う気持ち」です。
これはとても大切なことですが、持ちすぎると弊害も生まれます。
- 否定や失敗を怖がる(自分が傷つくのが怖いから)
- 挑戦を避ける(失敗が怖いから)
- 他人を見下す(他人を下げることで、自分の優位性を示したいから)
- 成功体験しか求めなくなる(失敗が怖いから)
- 怒られないように動く(怒られるのが怖いから)
自分を傷つけたくないという気持ちが出てきてしまい、挑戦や失敗ができなくなってしまいます。
現実の社会では、失敗から学ぶことこそが成功の近道です。失敗なしに成功はあり得ないです。
部活動では、失敗や悔しさを通して「打たれ強さ(諦めない力)」「挑戦する勇気」も身につけることができます。
そして、部活動では指導者から「怒られる・指導される」という経験を誰しもがします。
この経験こそが、大人になってから非常に役立ちます。
今、会社では若い人に怒れないという状況が各地で出ていると聞きます。
今の若者は怒られ慣れてないから、怒られたことでショックを起こしやめてしまうんじゃないかと年配の方々は思ってます。
怒られるのは、改善成長する機会でもあるので、そんなんでいちいちショックを受けていてはいけません。
むしろ、成長できてラッキーくらいに捉えるべきです。(しかし、世の中には理不尽に怒るク〇野郎もいるので、そういうときは流してオッケーです。ここでも怒られ慣れていればササっと流すことができます)
学校生活では、勉強ができ、みんなに合わせて生きていれば怒られることはないです。(勉強できる優等生タイプは怒られません!)
そんな優等生でも、部活では比較的指導や怒られるといった経験をできる可能性が高いです。
部活では怒られる・指摘される経験が比較的多くできます、これは非常にいいことだと思います。
個人的には、部活をやらずに勉強だけできてしまった優等生タイプが社会に出たときが結構まずいんじゃないかと思います。
怒られる経験をしていないためです。自分が偉いと勘違いしてしまい、失敗することも躊躇します。
自分の大学時代の部員に、このようなタイプの人がいてチームが困ってました。
責任を果たしてないくせに、いざ指摘すると逆ギレしてしまうような人で、徐々に周りも言わなくなってしまいました。
自分も、彼にもっとこうしてほしいと要望しても、逆ギレされ、さらには自分の欠点を重箱の隅をつつくように晒してきてしまい、よくケンカになりました。
そんな彼は、部活をやっていたものの優等生タイプで怒られた経験がほぼないような人でした。チームメイトからはプライドが高いと言われてました。こんな苦い経験から、このような人間を作りたくないと強く感じました。
体力の向上
特に運動部では、体力が確実に身につきます。
体力は、集中力、メンタルの安定にもつながります。
そして、「健康」を構成する土台になります。「健康」はすべての基盤です。
中学・高校・大学と一番成長できる時期に体力をつけれることは、大きなプラスになります。
また、なにかを成し遂げるためには、行動力が必要です。行動力もこの体力から来ていると考えてます。
さきほど述べた他人の気持ちを理解する、意外にもこの行動力が必要だったりします。
実は、他人の気持ちが分からないときは、その人と同じことを経験すればたいていわかります。
この経験をするにも、やはり行動力が必要です。すなわち、「体力」が必要になると思っています。
会社などでも、仕事ができる人は体力がバケモンみたいな人が多いという話も聞きます。
大人になってからも、この体力は大切です。
仲間づくり
部活動でできた仲間は、一生の財産です。
10年以上たった今でも、筆者は部活仲間とつるんでいます。本当の親友や仲間というのは、部活などで一緒に苦労しなければ、作れないのかもしれません。
ともに汗を流した仲間との絆は深く、何歳になっても心の支えになります。
これは、部活動でしか得られない特別な仲間です。一生ものです。
2020年の高校野球ラストミーティングで、愛媛の北条高校野球部の澤田監督がおしゃっていた言葉は自分の中で印象強いです。
知り合って、知人となり
語り合って、友人となり
ともに汗を流して、仲間となる
(略)
厳しい練習に一生懸命みんなでついていく。
じゃなければ、本当の仲間なんてできるものか
今、部活を頑張っている少年少女よ、この言葉は真実です!
しっかりと仲間作りも頑張ってください!
指導者として大切にしていること
私は現在、外部指導者として生徒たちと関わる中で、次の点を意識しています。
- コミュニケーションをとる
- 一緒に身体を動かす
コミュニケーションを取るのは、自分自身も選手の気持ちを読み取り理解するためです。
選手の気持ちを読み取れば、ある程度は適切な指導をできると考えています。
一緒に身体を動かすのは、自分自身も身体を動かすのも好きですし、いつまでも運動できる身体で居たいから。
また、口だけじゃなく指導者自身も身体を動かすことで、背中で語ることができるから。
一緒に身体を動かせば、口だけよりも説得力はあるのではないかと思います。
そして、僕が選手にあーやれこーやれっていう前に、それが本当にできるのかを自分が一回身体を動かして試します。
そして、指導軸としては
- 人間的に成長できるように(ここで述べた経験を得て人生で役立ててほしい)
- ソフトボールを好きになってほしい、もっといえば運動自体を好きになってほしい
を軸に活動しています。
部活に対する日本の義務教育について
現在の日本の義務教育には、疑問点があります。
部活を減らす方向に動いています。
勉強さえやっていればとりあえずいい、みたいな状態になっている気がします。
結局、教育方針を決める人たちに、勉強はできる偏差値秀才が多いからだと思います。
勉強だけできてもダメだと心から思っています。
部活は、人生において必要な能力をたくさん得ることができます。
勉強だけでは、そのようなたくさんの能力をカバーできません。
日本の教育はこのままでよいのかと不安になるばかりです。
おわりに
部活動ほど、人生において大切なスキルを磨け、貴重な経験をできるものは他にないと思います。
今を生きている子供たちには、勉強も部活も一生懸命頑張ってほしいです。
生徒たちが部活動を通じて、
他人を思いやり、仲間と協力し、困難を乗り越える力を身につけられるよう、
これからも指導していきたいと思います。
そして、ソフトボールに限らず運動することを好きになってもらいたい!!
そんな想いも持って指導していきたいです。
